Pentide-C:開発の経緯

ヒト幹細胞の分泌成分です。ヒト幹細胞培養液には、サイトカインや酵素、ECM構成タンパク質などの生理活性物質が豊富に含まれています。老化によっPentide-Cの浸透技術は医薬品のDDS研究から生まれたものです。生体の防御機構の一つ、抗菌ペプチドは私たちの体の中でも機能しています。抗菌ペプチドは耐性菌の出来づらい抗生物質として研究が行われていますが、その中に細胞膜を透過するペプチドがあることが分かってきました。この細胞を透過するペプチドCPP: cell-penetrating peptideはドラッグデリバリーシステムや細胞への遺伝子導入のベクターとして研究されています

Pentide-CでビタミンC を安定化させているペプチドは、こうした研究から見出された浸透型ペプチドです。
通常のビタミンC誘導体で安定化に使われる物質は、それ自体が機能を持つものは少ないですが、Pentide-Cの浸透型ペプチドは、ビタミンCを表皮から浸透させ線維芽細胞やケラチノサイトの中にビタミンC を運び込み、細胞の中でビタミンCとの結合が外れ、ビタミンCは活性を取り戻します。

こうしたメカニズムでビタミンCトランスポーターに依存せず細胞に取り込まれるPentide-Cは、生体内利用率が高く、低濃度ではビタミンC以上の機能が確認されています。

Pentide-C:浸透のイメージ

ビタミンCは高い抗酸化作用があるがゆえに他の物質と反応していしまい、その機能を失ってしまいます。なので、ビタミンCを化粧品に配合する際にはビタミンCを他の物質と結合させて安定化させたビタミンC誘導体として配合される場合が多いです。

しかし、安定化させているだけで皮膚へ浸透しなかったり、仮に皮膚に浸透してもビタミンCがフリーにならずビタミンCとして機能していないものもあります。

しかし、Pentide-Cは細胞透過性ペプチドを安定化に使用しており、細胞透過性の機能で皮膚や細胞へ浸透していきます。さらにPentide-CはビタミンCと細胞透過性ペプチドがペプチド結合をしているので細胞内の酵素ペプチダーゼにより加水分解され細胞内でフリーになり、ビタミンCとして機能します。

Pentide-C:従来のビタミンC誘導体の問題点を克服したビタミンC誘導体

ビタミンCは美白、抗酸化、コラーゲンの生成促進などの機能が知られています。一方で、ビタミンCには化粧品に処方する上で、いくつかの欠点があります。優れた抗酸化機能があるがゆえに他の化粧品成分と反応してしまい、処方によっては褐変などの好ましくない結果を生むことになります。そのため化粧品として使用される場合には、ビタミンCの活性部位となる2位と3位の水酸基を置換するなどして安定化させたビタミンC誘導体として使用される場合が多いです。

Pentide-Cは、3位の水酸基にペプチドを結合させたビタミンC誘導体です。従来のビタミンC誘導体と大きく違う点は、結合しているペプチドが非常に多機能である点と、必要な場面でビタミンCがフリーになる点です。Pentide-Cに使用されているペプチドは細胞透過性ペプチドと抗菌ペプチド両方の機能を持っています。

Pentide-CのペプチドがビタミンC誘導体の構成要素として優れている点は、受容体に依存することなくビタミンCとともに細胞に取り込まれる点です。一般的にビタミンCは、アスコルビン酸とデヒドロアスコルビン酸の2つの活性物質の形で生体内に存在し、それぞれナトリウム濃度依存性ビタミンCのトランスポーターファミリーとグルコーストランスポーターファミリーのトランスポーターによって細胞に吸収されます。

ビタミンCのトランスポーターは、私たちの体の様々な臓器や組織で発現していますが、皮膚組織よりも肺・肝臓・腎臓・消化器系などの他の組織で比較的多く発現しているため、肌に直接塗布する化粧品原料の場合限界があります。

一方で細胞透過性ペプチドは、エンドサイトーシスや細孔の形成によってトランスポーターに依存することなく細胞に取り込まれるため、Pentide-Cも同様に細胞に取り込まれると考えられます。さらにPentide-CのビタミンCとペプチドは、ペプチド結合をしているため、細胞に取り込まれた後、細胞にあるペプチダーゼなどのプロテアーゼによって、そのペプチド結合は加水分解され、容易にビタミンCがフリーな状態になります。

Pentide-C:生体 内利用率の高さ

CITE JAPAN 2021 アワード審査員に最も評価された、Pentide-C の生体内利用率の高さ

化粧品産業技術展 CITE JAPAN 2021 で行われたCITE JAPAN アワード2021 技術部門 においてPentide-Cは金賞を受賞することができました。これは原料としての濃度比較が行われる化粧品業界の中で、生体内利用率の訴求という化粧品では新しい概念が評価されました。

通常ビタミンCが細胞に取り込まれる際にはビタミンCトランスポーターという受容体が発現していないと細胞内へ取り込まれません。ですが、Pentide-CはビタミンCトランスポーターの発現に関係なく細胞膜から浸透していくため、低濃度の場合でもより多くのビタミンCが浸透していきます。且つPentide-Cのペプチド結合は細胞内に透過した際に細胞内の酵素ペプチダーゼにより結合が切断されるためビタミンCが細胞内で有効的に活用されます。

 

従来のビタミンC誘導体とPentide-Cの違い

Pentide-C:浸透性

Pentide-Cは皮膚を透過し細胞まで到達することを皮膚モデルと細胞実験で確認しています。皮膚透過度についてはFranz Diffusion Cell Assayを用いてビタミンCと比較しています。ビタミンCは24時間で皮膚の透過を確認できませんでしたが、Pentide-Cは26.6%の透過を確認しました。

皮膚透過度に加え、細胞への取り込みについて、Pentide-Cを蛍光プローブで標識し、培養中の線維芽細胞とケラチノサイトに添加すると優れた細胞透過性が確認されました。ともに右が標識されたPentide-Cが取り込まれた様子です。

Pentide-C:コラーゲン生成

 

Pentide-CとビタミンCのコラーゲン合成誘導効果を比較するために、ヒト線維芽細胞に0.08~10μMで添加しました。ビタミンCは2μMより低い濃度で誘導活性を示しませんでしたが、Pentide-Cは、0.08μMの低濃度から誘導活性を示しました。

Pentide-Cは高い細胞透過性と生体内利用率により、ビタミンCよりも高いヒト線維芽細胞に対するコラーゲン生成能を持つことが示唆されました。

Pentide-C:生体内利用率

前頁のコラーゲンの生成の実験結果には、一見すると矛盾があります。線維芽細胞にコラーゲンを生成させるのはビタミンCの効果です。Penride-CにおけるビタミンCの分子比率は約12.3%なので、Pentide-CとビタミンCを同じ濃度で添加すれば、Pentide-Cのコラーゲン誘導能はビタミンCの12.3%程度になるはずです。

しかし実験結果では2μM未満ではPentide-Cの方がコラーゲンを強く誘導しています。これは低濃度ではビタミンCが細胞のトランスポーターに接触しづらいことに対して、Pentide-Cは細胞透過性ペプチドの機能によってトランスポーターに依存することなく細胞に取り込まれ、その後にペプチドとビタミンCの結合が速やかに解かれることによって、ビタミンCよりも強くコラーゲンを誘導していると考えられます。これは以下のメラニンの抑制、抗炎症についても同様のことが言えます。

Pentide-C:メラニンの抑制

 

Pentide-CとビタミンCのメラニン合成抑制効果を比較するためにB16F10メラノーマ細胞のα-MSH誘導モデルを使用して検証を行いました。ビタミンCは40μMより低い濃度では、メラニンの合成阻害活性を示しませんでしたが、Pentide-Cは10~40μMの濃度範囲で濃度依存的な阻害活性を示しました。

Pentide-Cは高い細胞透過性と生体内利用率により、ビタミンCよりも高いメラミン抑制効果があることが示唆されました。

Pentide-C:抗炎症

 

Pentide-Cの抗炎症効果を確認するために単球を用いたLPS刺激モデルを使用し炎症マーカーであるTNF-α分析を行いました。
LPSによるTNF-α誘導活性を抑制するかどうかをELISA分析で、10~40μMの濃度範囲での抑制効果を確認しました。
ビタミンCの場合150μMの高濃度で約22%の抑制効果を示しましたが、Pentide-Cの場合、40μMの濃度で87%以上の抑制効果を示しています。
Pentide-Cは高い細胞透過性と生体内利用率により、ビタミンCよりも高い抗炎症効果があることが示唆されました。

Pentide-C:抗菌性

Pentide-Cの大きな特徴は、浸透性に加え黄色ブドウ球菌に対して、ごく低濃度で制菌作用を持つことです。ビタミンCを浸透させつつ、肌の細菌叢を正常に保ちます。1~40μMの範囲でMIC試験を行ったところ、黄色ブドウ球菌に対して10μM以上の濃度で強い抗菌作用を示しました。

Pentide-C:安定性

 

Pentide-CはビタミンCの活性部位に浸透型ペプチドを結合させているため、ビタミンCの活性を高温でも長時間維持し続けます。この実験では40℃の条件で通常のビタミンCは7日で検出されなくなったのに対し、Pentide-Cは30日間放置後、約89.7%以上のビタミンCの活性が維持されていることが確認されました。

Pentide-C:コラーゲン生成能比較

Pentide-Cは老化した細胞ではビタミンCより高いコラーゲン生成能を示しました。これは細胞が老化するにつれてビタミンCトランスポーターの活性も低下するため、ビタミンCトランスポーターを介さずに浸透するメカニズムを持つPentide-Cがより良い活性を示しました。

若い細胞ではビタミンCトランスポーターの活性が落ちていないため、ビタミンCは濃度依存的にコラーゲン生成能が高くなります。Pentide-Cは低濃度ではビタミンCより高い活性を示すことがわかりました。

Pentide-Cのヒト 臨床試験結果

Pentide-C のシワ、肌の明るさ、メラニン指数に対する効果を確認しました。被験者は24名で被験物質(Pentide-Cの主成分:アスコルビルメチルカルボニルペンタペプチド-72ートリーt-ブチルトリプトファナミド)を0.0005%含有するクリームを毎日塗布し、使用開始前、使用開始後2週間・4週間で評価を行いました。その結果、すべての項目で統計的有意差をもって改善が確認されました。

0.0005%という配合量で4週間の塗布によって有意差を得たことで、低濃度で効果的な「Pentide-C」の生体内利用率の高さが示唆されました。

Pentide-C のヒト臨床試験結果の考察

ヒト臨床試験では被験物質(Pentide-Cの主成分:アスコルビルメチルカルボニルペンタペプチド-72ートリーt-ブチルトリプトファナミド)を0.0005%濃度で配合し統計的有意差が確認されました。これはPentide-Cの原料濃度で言うと5%配合した際と同等量にあたります。

この5%という濃度は短期的に統計的有意差を出すために設定された濃度であるため、実際にPentide-Cを化粧品に配合される際には5%よりも低い濃度でも効果があると考えられます。

実際に化粧品に配合される際にはPentide-C以外の成分との相乗効果や、化粧品の長期的な使用が考えられるため、実際のヒト臨床試験結果の濃度より低く設定し、Pentide-Cの推奨配合量を1%以上とさせて頂きました。